営業手当が時間外労働手当として認められる条件(東京地判 平成24年6月29日 アクティリンク事件)

平成24年6月29日に東京地裁で出されたアクティリンク事件判決では、賃金規程に営業手当が月30時間相当の時間外手当である旨が記載されていたにも関わらず、これを時間外手当として認めることはできないと判示されました。

近年、定額残業手当についての裁判所の判断は厳しくなってきており、単に賃金規程に時間外労働の対価としての性質を有すると規定するだけでは不十分です。
この判例も、今後の定額残業手当の運用に大変参考となると思われますので、その中身を今一度確認しておきましょう。


【事案の概要】
A社は不動産売買・管理を目的とする会社であり、その社員であったBさんとCさんが時間外労働賃金が未払いであるとして賃金支払いを求めた事件です。
Bさんは、平成14年から21年まで、Cさんは、平成16年から平成22年までA社で勤務していました。
A社の賃金規程には「営業手当は、就業規則15条による時間外労働割増賃金で月30時間相当分として支給する」と規定されており、BさんとCさんは「売買事業部」に所属していた間、Bさんには基本給のほか11万円~12万円の営業手当が、Cさんにも6万円~7万円の営業手当が支給されていました。
ただ、同じく残業をしていた「業務部」については、営業手当の支給はありませんでした。
本件は、A社側は、この営業手当が時間外労働賃金の一部であると主張して争った事案です。

【裁判所の判断】
時間外労働賃金が「時間外手当」という名目ではなく、他の手当の名目(たとえば営業手当・業務手当などの名称)で定額残業代の支払いが許されるためには以下の2つの要件が必要不可欠である。
①実質的に見て、当該手当が時間外手当の対価としての性質を有していること。
②当該定額手当の金額が、労働基準法所定の計算方法によって算定した時間外労働賃金額を下回るときは、その差額を清算するという合意が存在するか、そうした取り扱いが確立していること。

そして①の対価性は、
(1)時間外労働に従事した従業員だけを対象にその全員に対して例外なく支給されることが予定されているか
(2)時間外労働の対価であること以外に合理的な支給の理由や算定根拠があるか
という2点から判断されるべきものである。

本件では、「業務部」に所属する従業員も時間外労働をしているにも関わらず業務部の従業員には営業手当が支給されていない。
このことについて、会社の代表者は「営業はいろいろお客さんと会ってお金を使うこともありますし、やはり営業は大変だというのは分かっていますので、そういう意味で、ほかの従業員よりは多く出すということでやっていました」と述べている。
また営業成績が悪いと営業手当の支給自体をカットすることまで予定していたことがうかがわれる。
これらのことを考慮すると、営業手当は時間外労働の対価というよりも、営業活動に伴う経費の補充ないしは営業成果に対する一種のインセンティブとして支給されていたものと見るのが相当である。

②の清算の実施についても、A会社は、差額の清算を行った形跡はまったく認められない。

以上により、本件営業手当は、上記①②いずれの条件も満たさず、したがって、賃金規程13条に基づき、本件営業手当をもって時間外労働手当とみなすことは許されない。

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SR人事労務総合研究所
社会保険労務士 池原伸
電話 06-7652-9289
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