退職前の有給休暇消化期間中に新たに付与された有給休暇の消化を拒めるか

【相談内容】
Aさんは退職するにあたり、これまで付与されて使用できなかった有給休暇を消化してから退職しようとしています。有給休暇はあと28日残っていますので、7月25日から有給消化し、9月5日で退職する予定です。しかし、9月1日でさらに20日有給休暇が付与されるため、Aさんは、会社に9月1日で付与される20日もあわせて消化することを希望し、10月4日で退職したいと伝えてきました。会社はこのAさんの有給消化を認めなければならないのでしょうか?

【私の回答】

年次有給休暇は、一定期間の継続勤務と8割出勤という条件を溝たす場合に、付与する義務が生じます。
長期勤務者で付与日数が上限の20日に達している人等の場合、消化日数が少なければ、年休の残日数が2年分累積で40日近いケースも珍しくありません。

さて、このAさんの場合に検討すべきは、Aさんの退職届で退職日がいつになっているかということです。退職日以降は有給休暇は取得できませんし、退職届は一度受理してしまうと、双方の同意がなければ取り消しや訂正はできません。
そこで、Aさんが仮に9月5日で退職する旨の退職届を提出していた場合は、その後、有給休暇が発生することを知ったとしても、これを消化することはできません。この場合は、会社は消化を拒否できます。

他方で、Aさんが有給休暇の付与を見越して、10月4日付で退職する旨の退職届を提出していた場合は、有給休暇の取得は労働者の権利であり、有給休暇消化期間中には有給休暇を付与しないといった法規定はありませんので、会社は消化を認めなければなりません。

それでは会社に打つ手はないのでしょうか?
ないことはありません。
ここでは2つの方法をご紹介します。

1つは、有給休暇の単価を変更するという方法があります。
過去の私のブログにも記載しておりますが、有給休暇の対価には交通費は含めないことが可能です。理由はその日は通勤しないからです。
この考え方を一歩進めると、例えば定額残業代として手当を支給している場合、この定額残業手当も対価から除外することが可能です。理由は、残業しないからです。
もっとも、退職を前提とする消化以外の場合にこのような単価を適用するのは運用上問題が生じるおそれがありますので、退職を前提とする消化の場合に限ってという条件をつけて運用するのがよいと思います。
もちろん、このような単価計算をすることは就業規則に明示しておく必要がありますし、これまでこのような運用をしていない場合には、不利益変更にも該当しますので相応の改正手続をとる必要はあります。

2つめは、あまりおすすめはできませんが、消化する有給休暇が31日以上となる社員の場合、平均賃金30日分の解雇予告手当のほうが金額的に安くなりますので、解雇予告手当を支払って解雇するという手法が考えられます。
もっとも、解雇には合理的な理由が必要とされますので、「有給休暇の消化を拒むため」という理由では合理性は認められず不当解雇になってしまいます。
したがって、解雇できうる理由がある社員さんに限っては、解雇するのも1つの手段であるということです。


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SR人事労務総合研究所
社会保険労務士 池原伸
電話 06-7652-9289
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