業務中にケガをした従業員が休業する場合の給与
【相談内容】
運送業を営むA社で働くBさんは、倉庫内で荷物を運んでいる最中に、階段から転落し、腰の骨を折ってしばらく会社を休むことになりました。A社の規程では、労災保険から休業補償給付を受ける間は給与の支給はしないことになっています。今回会社としてはBさんに給与を全く支給しなくて大丈夫でしょうか?
【私からの回答】
労働者が業務上の傷病により休業する場合、労災保険から「休業補償給付」と「休業特別支給金」が支給されます。
その要件としては
①療養のため労働することができないこと
②4日目以上の休業であること
③賃金を受けないこと
となっています。
①は、治療を受けた病院のお医者さんが証明してくれます。
②は、4日以上会社を休まないといけない程度のケガであることを要するということです。
会社として問題となるのは③です。
休業補償給付は休業3日間の「待期期間」を経た後、休業4日目から支給されるため、最初の3日間については労働基準法にもとづく補償として平均賃金の60%以上の額を、使用者が支払わなければなりません
(労働基準法76条、84条)。
この3日間は、有給休暇を消化させても問題ありません。また土日が公休である会社の場合、仮に金曜日にケガをした場合、土日月の3日間が待機期間となりますが、平均賃金の支払が必要となるのは月曜日のみとなります。
4日目以降は、法律上給与の支払い義務がありませんので、給与を支払うかどうかは会社の任意の判断ということになります。
A社の場合、会社の規程上、休業補償給付を受けられる期間中の給与の支給はしないとの定めがありますので、支給しなくても問題はありません。
ですが、もう一歩進めて考えてみましょう。
休業補償給付の1日の額は、労働者の直前3カ月の賃金を平均した額の60%です。
また、「休業特別支給金」は、労働者の直前3カ月の賃金を平均した額の20%です。
これらを合わせるとおよそ賃金の80%が補償されることになります。
ということは、休業期間中、ケガをした従業員さんの給与は20%ダウンすることになります。
これでは従業員に申し訳ないとお考えの経営者様もおられることでしょう。
そこで、減額分の20%を会社が補てんしてあげることができるのか考えてみましょう。
休業補償給付の支給要件③の「賃金を受けないこと」とは、「平均賃金の60%以上の賃金を受けないこと」と定義されています。
逆に言うと、平均賃金の60%未満までは支給してもかまわないということです。
とすると、おかしなことが起こってしまいます。
例えば、休業4日目以降について、会社が賃金の50%を支払った場合、休業補償給付(60%)と休業特別支給金(20%)をあわせると、労働者は通常の賃金の130%を受けることになり、通常よりも得をすることになってしまいます。
しかし、このように100%を超える場合でも減額などの調整はおこなわれず、休業補償給付と特別支給金は、満額支給されます。おかしな感じがしますが、法律上はこうなっています。
他方で、会社が60%以上の賃金を支払ってしまうと休業補償給付と特別支給金は、まったく支給されなくなってしまいます。
以上から、今回のご相談に対する回答としては
①法律および会社の規程からは、Bさんが休んだ最初の3日間(労災保険の待機期間)については平均賃金の60%以上を支給しなければならない。
②労災保険から休業補償給付を受ける期間中(休業4日目以降)は、賃金の支給はしなくて問題はない。
③休業補償給付を受給している期間中に、会社が平均賃金の20%を支給すると、Bさんに賃金の減額が生じない。
④休業補償給付を受給している期間中に、会社が平均賃金の20%を超えて60%未満の金額を支給すると、会社のためにケガをしたBさんに対する見舞金という意味を持たせて会社の誠意を示すことができる
といった感じになろうかと思います。
①②は法律上の対応、③④は労務管理上の対応とお考えください。
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SR人事労務総合研究所
社会保険労務士 池原伸
電話 06-7652-9289
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運送業を営むA社で働くBさんは、倉庫内で荷物を運んでいる最中に、階段から転落し、腰の骨を折ってしばらく会社を休むことになりました。A社の規程では、労災保険から休業補償給付を受ける間は給与の支給はしないことになっています。今回会社としてはBさんに給与を全く支給しなくて大丈夫でしょうか?
【私からの回答】
労働者が業務上の傷病により休業する場合、労災保険から「休業補償給付」と「休業特別支給金」が支給されます。
その要件としては
①療養のため労働することができないこと
②4日目以上の休業であること
③賃金を受けないこと
となっています。
①は、治療を受けた病院のお医者さんが証明してくれます。
②は、4日以上会社を休まないといけない程度のケガであることを要するということです。
会社として問題となるのは③です。
休業補償給付は休業3日間の「待期期間」を経た後、休業4日目から支給されるため、最初の3日間については労働基準法にもとづく補償として平均賃金の60%以上の額を、使用者が支払わなければなりません
(労働基準法76条、84条)。
この3日間は、有給休暇を消化させても問題ありません。また土日が公休である会社の場合、仮に金曜日にケガをした場合、土日月の3日間が待機期間となりますが、平均賃金の支払が必要となるのは月曜日のみとなります。
4日目以降は、法律上給与の支払い義務がありませんので、給与を支払うかどうかは会社の任意の判断ということになります。
A社の場合、会社の規程上、休業補償給付を受けられる期間中の給与の支給はしないとの定めがありますので、支給しなくても問題はありません。
ですが、もう一歩進めて考えてみましょう。
休業補償給付の1日の額は、労働者の直前3カ月の賃金を平均した額の60%です。
また、「休業特別支給金」は、労働者の直前3カ月の賃金を平均した額の20%です。
これらを合わせるとおよそ賃金の80%が補償されることになります。
ということは、休業期間中、ケガをした従業員さんの給与は20%ダウンすることになります。
これでは従業員に申し訳ないとお考えの経営者様もおられることでしょう。
そこで、減額分の20%を会社が補てんしてあげることができるのか考えてみましょう。
休業補償給付の支給要件③の「賃金を受けないこと」とは、「平均賃金の60%以上の賃金を受けないこと」と定義されています。
逆に言うと、平均賃金の60%未満までは支給してもかまわないということです。
とすると、おかしなことが起こってしまいます。
例えば、休業4日目以降について、会社が賃金の50%を支払った場合、休業補償給付(60%)と休業特別支給金(20%)をあわせると、労働者は通常の賃金の130%を受けることになり、通常よりも得をすることになってしまいます。
しかし、このように100%を超える場合でも減額などの調整はおこなわれず、休業補償給付と特別支給金は、満額支給されます。おかしな感じがしますが、法律上はこうなっています。
他方で、会社が60%以上の賃金を支払ってしまうと休業補償給付と特別支給金は、まったく支給されなくなってしまいます。
以上から、今回のご相談に対する回答としては
①法律および会社の規程からは、Bさんが休んだ最初の3日間(労災保険の待機期間)については平均賃金の60%以上を支給しなければならない。
②労災保険から休業補償給付を受ける期間中(休業4日目以降)は、賃金の支給はしなくて問題はない。
③休業補償給付を受給している期間中に、会社が平均賃金の20%を支給すると、Bさんに賃金の減額が生じない。
④休業補償給付を受給している期間中に、会社が平均賃金の20%を超えて60%未満の金額を支給すると、会社のためにケガをしたBさんに対する見舞金という意味を持たせて会社の誠意を示すことができる
といった感じになろうかと思います。
①②は法律上の対応、③④は労務管理上の対応とお考えください。
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SR人事労務総合研究所
社会保険労務士 池原伸
電話 06-7652-9289
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