社労士池原の労務管理日誌

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zoom RSS 従業員に対する研修費用の返還請求

<<   作成日時 : 2016/06/12 15:14   >>

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【ご相談】
従業員に資格を取得させるため、会社が入学金、授業料合計60万円を負担して、社外の研修機関に通学させ、資格取得させました。その際、5年間退職しないと約束していたのですが、1年2か月経過した先日、従業員から退職したいと申し出がありました。この従業員のために支出した、通学費・授業料などを返還させたいのですが、問題ないでしょうか?

【私からの回答】
まず5年間退職しないという約束が可能かどうか考えてみましょう。
有期雇用契約で定めることができる雇用期間は、労働基準法14条1項各号の一定の専門職に該当しない限り、3年間が上限と定められています。
よって、一般的な職種で、5年間の雇用契約を締結することはできないため、雇用契約で5年間勤続することを約束させることはできません。
次に、約束違反をしたので返金させる行為についても、約束に違反したことを理由とした違約金を取ることは労働基準法16条の損害賠償の予定の禁止規定に抵触するためできません。

ご質問のような研修費用を会社が支出したにもかかわらず、従業員が退職してしまった場合の返還請求について、裁判所の判断をみてみると、いまだ最高裁判例はまだ出ていませんが、地裁判決として、藤野金属工業事件判決(大阪地判昭43.2.28)があります。
この裁判では、溶接技師資格取得支援にあたり、「1年間は退職しない。退職する場合は、受験のための練習費用等として3万円を支払う」という誓約書をとったことにつき、「費用の計算が合理的な実費であって、使用者側の立替金と解され、かつ、短期間の就労であって、全体としてみて労働者に対し雇用関係の継続を不当に強要するおそれがないと認められ」、「労基法第16条の定める違約金又は損害賠償額の予定とはいえない」と判断されています。
この判決でポイントとされるのが、@返還費用が実費であること、A退職を制約する期間が短期間であることとなります。
@は、返済する金額が合理的であること、つまり学費や入学金といった明確に分かる金額である必要があるということです。
Aは、退職したら返金という条件で、不当に長期間、従業員の退職の自由を侵害してはいけないということです。
そして、この事案では、金額は資格取得に会社が支払った実費の3万円であり、退職制限期間も1年であるから、不当に退職の自由を侵害しないとして返済規定が有効とされたわけです。

では、今回のご質問の事案ではどうでしょうか?
金額は60万円、退職制限期間も5年間ですから、この判決事案と同視することはできません。

そこで、このような場合は、会社が資格取得費用を支払って一定期間内に退職したら返還せよという構成を用いるのではなく、会社が従業員が受講したい講座の費用を貸し付ける構成をとることをお勧めします。
具体的にいいますと、労働者が個人的に資格取得する費用を会社から一旦借り受ける。そして、その返済期日は5年後とする。もし返済期日前に退職した場合は、すぐに全額返済する。という内容を盛り込んだ金銭消費貸借契約を会社と従業員間で締結することになります。
そしてこのとき、金銭消費貸借契約だけでなく、社員貸付金規程も作成されておくこともお薦め致します。

その上で、従業員様が5年間勤続された後、会社は返済期日に賞与等の名目で買付金相当額を支給し、従業員はその賞与等と貸付金を相殺して返済を完了させることで、従業員は実質的に負担0円で返済が完了できることになり、結果として会社は資格取得費用を支援したことになります。

実際には、民法上、税務上のチェックが経た書類の作成が必要となりますので、専門家へのご相談が必要になると思います。

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フロネーシス社労士事務所
社会保険労務士 池原伸
電話 06-6777-8610
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